ストーンウォール暴動50周年NYCプライドに現れたTAIWAN

 今年はアメリカ・ニューヨークで起きたストーンウォール暴動から50周年の記念の年にあたり、15万人が参加する「WorldPride」が開催された。台湾からも祁家威、呂欣潔、台湾諮詢LGBTホットラインのメンバーをはじめとして、約200名ものLGBTが、6月30日、NYCプライドマーチに参加した。直前に同性婚を法制化した台湾チームは、アジアで初めての同性婚法制化を成し遂げたことを、世界に向かって誇らしげにアピールした。ニューヨークの中心部をアルファベットTAIWANの6文字を堂々と掲げて行進できたことで、日頃中国から抑圧を受けている台湾人をとりわけ興奮させた。

 というのも、現在、台湾は国際組織からほぼ完全に追放された世界の孤児状態にあるからである。オリンピックをはじめとする国際的なスポーツ大会には、台湾ないし正式の国名である中華民国を使うことが許されず、国旗である青天白日旗を使うこともできない。やむなく「中華台北」Chinese Taipeiという名称、特別な旗で参加することを余儀なくなれている。これはむろん中華人民共和国が、中華民国が存在することを承認させないと同時に、台湾の独立も阻止するために妨害工作をしているからである。LGBTの当事者運動が低調な中国からはチームとしての参加はなく、プライドパレードならば、台湾としての参加が可能になる。LGBTの市民運動の世界は、台湾人にとって数少ない自分たちをありのままに主張できる場なのである。

 

誇らしげにTAIWANとして、NYC Prideマーチを行進。

法施行1カ月で1,173組が届出

 国レベルで戸籍事務を管轄する内政部の発表によると、同性婚法の施行から1カ月を経た2019年6月22日までに、性別を同じくする両名間の婚姻届は、合計で1,173組に達した。女性同士が790組(約67%)、男性同士が383組であった。登録数が最多だったのは新北市で242組、次いで台北市198組、高雄市159組、台中市141組、桃園市123組、台南市82組と続く。人口の少ない馬祖の連江県ではまだ届出がない。また、台湾人と外国籍のカップルは28組あったという。この時点ですでに2組(屏東県と苗栗県)が離婚している。

 このように台湾にはすでに夫婦同様の生活実態を備えた同性カップルが、相当数に上っていて、同性婚法施行の準備がとうに整っていたことが知れる。次回以降は、同性婚法の制定に至るプロセスをたどり、台湾がなぜアジアで初の同性婚法制化を成し遂げたかに迫りたい。

■鈴木 賢
1960年北海道生まれ。明治大学法学部教授、北海道大学名誉教授。ゲイの当事者として1989年から札幌で活動を始める。レインボーマーチ札幌を創始。現在「自治体にパートナーシップ制度を求める会」世話人、北海道LGBTネットワーク顧問。
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