由梨:オランダでのゲイ男性としての暮らしはいかがですか?

タカさん:アムステルダムに来て人権って酸素のように当たり前に存在するものなんだ、と気づいたんです。目に見えないし、吸っていることに気づかない。オランダに住んで、今まで酸素不足でアップアップしていたことに気づきました。家族の話や恋愛の話もできない。偏見の目で見られる。大切な人と手を繋いで歩くこともできない。子供がいないと一人前じゃないと言ってくる人もいる。結婚しないと出世にも関わる。そんなことが当たり前だと思っていました。同調性・同調圧力の酸素不足の状態で過呼吸になりながら、なんとか生きていました。

由梨:人権は酸素のよう……、なるほど……。確かに、日本にいたときの息苦しさとは違う生活がここにはありますね。

タカさん:会社でも、普通に「彼氏は元気?」と聞いてくれて自然に会話ができるのが嬉しいです。最近、同僚が「姪っ子ができたんだよ」と喜んで報告してきて、「タカも子供作らないの?」と聞いてきたんです。聞いてみると、その姪っ子というのが、同僚のレズビアンのいとこがパートナーと授かった子らしくて。ゲイでもレズビアンでも、ストレートと本当に同じ扱いなんです。

由梨:ですね。分かります。

タカさん:シンくんも、最初はすぐに帰りたがるかな、なんて思ってたけど。そんなことなかったね(笑)

シンくん:オランダに来て、はじめてオープンでいられることの素晴らしさに気づきました。彼氏のことやゲイとしての自分をこんなに飾らずに、同僚や友達と話せる日が来るなんて思ってもいませんでした。日本で生活しているときは、親友や尊敬する上司等だけにカミングアウトしていました。自分が人間関係をつくれた、もっとこの人に自分というものを知ってほしいと思ったときだけカミングアウトしていたんです。まぁ今の日本はこんなもんだろうなと半ばあきらめというか、その状況を受け入れるようにしていました。そっちのほうが楽だし。でも、ここでは、ゲイであるということを何も考えず、躊躇なしにみんなに伝えることができる。実は大阪から東京に出てきたとき、最初の数年はすごくホームシックだったんです。オランダなんてものすごく遠いしさらにホームシックになるかなと思ったけど、自分に素直でいられるし、タカもいるしで、全然ならなかった(笑)。

パリのディズニーランドにて。欧州内の旅行は安くて便利。

由梨:いいお話ですね。ちょっと話は変わりますが、オランダでの、ゲイのナイトライフはいかがですか? あっちゃんはちょっとご不満なようですが(笑)。

1 2 3 4 5
< >

バックナンバー