共通して聞かれた声としては、セクシュアリティーを隠さない、隠しちゃダメなんだ、という強い意志でした。隠すことで自分たちが「普通じゃない」と認めることになるし、隠すと自分たちのような人たちがいないことになることに自分が加担することになる、というのがその主なロジックです。とはいえ、履歴書に今だに性別欄がある日本と、オランダとの社会的な隔たりが大きいことも事実です。オランダでこうだから、日本でもそうするべき、という考えはありません。ちなみにこの会社の面接案内のメールには「あなたらしく、ありのままのあなたで面接に来てください」という一文が添えられているそうです。こんな一言があるだけでも、なんだか安心しちゃいますね。インタビューを進めるにつれ、ほとんどの方が「この職場環境であれば、カミングアウトしても大丈夫」という安心感がまずあった、とのこと。1日目からカミングアウトした人、4か月たってからカミングアウトした人などタイミングの差はあれど、みんなが「大丈夫」と感じた環境の秘訣。それは何だったのか。
多い要因は、三つ。(1)他にもLGBTQの人が周囲にいたこと。(2)ストレートの同僚も理解のありそうな人たちであること。(3) 社内にあったLGBTQグループの存在。この三つでした。大きな会社ならではの理由ですが、聞いているだけでも、「そりゃ心強いよな」と納得。逆に、こんなこと・こんな人がいるとカミングアウトしづらい、と感じた要因もあります。同性愛者をネタにした心無い冗談やコメント。それと男らしさ、女らしさを強調する人たちの存在でした。これも、納得。一つ意外だった発見は、LGBTQ当事者たちの中にも、性差を強調する人がいたことです。いわゆるマッチョなゲイの人が、「ゲイの中でもちょっとオネエ的なゲイをかつては見下していた」という発言があったり、あるレズビアンの女性は、「バイセクシュアルの人は異性と付き合っている限りはストレートみたいなものだし……」というニュアンスの発言もありました。この性差に関する考えは、ストレートの人も、LGBTQの人も、程度の差はあれど、偏見があるのかな? と思いました(自分も含め)。
もう一つ、インタビュー参加者から聞かれた声は、「自分が自分らしくいられない職場で力が発揮しづらい」という言葉です。それは、ゲイである自分、レズビアンである自分を強調するのではなく、「それはあくまで私の一部」なだけなのだけれど、それを周囲に隠すには多大な「いらぬ」労力が必要となります。週末何をしていたのか、休暇はどこに、誰と行くのか、好きなタレント、音楽などなど……。普段の何気ない会話にも気を付けるようになり、萎縮してしまいます。