——まず保険会社であるAIGグループがこれまで取り組んでこられたLGBT支援についてお聞かせいただけますでしょうか。

ダイバーシティ&インクルージョンはAIGにとって最も重要な価値観のひとつです。それは、お客さまに対しても、保険代理店や社員に対しても同様です。多様性を尊重し、それぞれの違いを認め合い、誰もがいきいきと活躍できる環境を社内に構築し、その重要性を日本の社会へも発信していきたいと考えています。年齢や国籍などと同様、LGBTも実はとても身近にある違いです。AIGでは、この違いが当事者にとって障壁とならないよう社内外で取り組んでいます。
まず具体的な例として、20163月に、一部のグループ保険会社において、傷害保険の死亡時受取人の指定の手続きを変更し、一定の条件を満たす同性のパートナーの方にも受取人となっていただけるようにいたしました。

 

——取引先の保険代理店の方からの反響はどうでしたか。

実は、これまでの取り組みのきっかけになっているのは、ある代理店の方の声なのです。福岡を拠点とするその方が、九州レインボープライドの主催者と偶然知り合い、「AIGなら理解してくれる!」と、参画を提案してくれたのが全ての始まりです。それが2015年の秋で、その直後から福岡、東京、大阪で開催される同様イベントに参加し、また役員や社員に対してはLGBTに関するセミナーを行いました。また同時に一部の代理店の方々にも同様のセミナーを行いました。

 

——すごいスピード感ですね。

元々AIGはグローバル全体で「多様性を尊重する」という考え方を大切にしてきました。その上で、LGBTについても、代理店の方からの声に応えるべく対応の幅を迅速に広げていく必要があると判断しました。
2016年の4月には、先ほど述べた施策にあわせて、社内に「LGBT & Allies Rainbow」という社員ネットワーキンググループ(*)が立ち上がりました。また、社内の福利厚生の規定に関して、これまで事実婚の方たちも対象になっていたのですが、同性のパートナーにも適用を開始しました。
*同じような関心や経験を持つ従業員が自主的・自発的に協力し、就業やキャリアに関する情報共有のための様々な自主活動を行うネットワーキンググループ。

 

——日本のAIGで「多様性を尊重する」という考え方を大切にしている背景についてお聞かせいただけますでしょうか。

AIGでは、グローバル全体で、性別、国籍、性的指向、家族構成、障がいのあるなしなどの違いから生まれる様々な経験を多様性として受け入れ、尊重しながら、最大限に活かす「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性とその受容)」の推進に取り組んできました。これは、日本においては、社員にとって働きやすい環境を整えるだけではなく、多様な視点からお客さまを深く理解し、リスクの低減を通してお客さまや社会に貢献する企業として、私たちが掲げる「ACTIVE CARE」の実現にもつながっています。「ACTIVE CARE」は先進的なテクノロジーやグローバルのノウハウ、国内市場における深い知見を活かしたイノベーションで、「お客さまの“まさか”を未然に防ぐ」支援を行っていくという事業戦略コンセプトです。私たちには「全ての方の“まさか”と向き合いたい」という想いがあります。あらゆる「まさか」を想定し、対応するためには、多様なバックグラウンドに意識が届く自分たちでいなければなりません。「多様性を尊重する」という考え方は、事業ミッション、部門の業務、社員の職務を達成する上で、一番根底にある価値観なのです。
そのため、社内にその意識を浸透させることはとても重要な課題だと捉えています。ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)促進のための社内向けニュースレターをつくる際にも、時には広報やマーケティングのチームにも入ってもらいながら、効果的なコミュニケーションになるよう相談して進めています。

 

——なるほど。先ほどあがった、社員ネットワーキンググループ「LGBT & Allies Rainbow」についてもお聞かせいただけますでしょうか。

はい。「LGBT & Allies Rainbow」は、LGBT当事者とその支援者(Allies)で構成されていて、約160名が所属しています。プライドパレードの現地でのブースやパレードの運営も彼らが主導して行っています。

 

なぜAIGという会社で、社員ネットワーキンググループという仕組みを使い、自分がイニシアチブを握って取り組もうと思ったのか、「LGBT & Allies Rainbow」の立ち上げメンバーの川野伸子さんに聞いてみました。

 

2015年の九州レインボープライドへの参加に続き、保険商品の死亡保険金受取人指定に関する対応や社員の福利厚生の見直しが行われたことで、この取り組みが、会社が真摯に向き合っている継続的なものであると実感することができました。また、自分が一社員としてできることの可能性も感じました。社員ネットワーキンググループでは手を挙げた人は誰でも自主的に動き、失敗を恐れず活動することができるからです。社内外問わず、「やってみたい」と思ったことを会社も応援してくれる環境なので積極的に活動に取り組むことができました。

 

——活動を続けられるモチベーションについて。

社内の応援、これにつきます。社員ネットワーキンググループにはエグゼクティブスポンサーとビジネスアドバイザーがおり、常に相談できる環境があります。また、活動回数が増えるに従って社内の声援が大きくなっているのを実感します。今年の東京レインボープライドも、案内メールを出す前から「今年も参加したいので日程を教えてください」との問い合わせが何件もありました。グループメンバー以外の社員もサポートしてくれるのを感じます。

 

——これまでの取り組みで印象に残っていること。

いくつも大きな出来事はあったのですが、自分の中で印象深いのは、当事者同士が自分らしく身構えることなく社内で会話をしていることです。社内でカミングアウトしていない社員も自分らしく話しているのを見て、「あれ?カミングアウトしていなかったはず……?」と思うぐらい、身構えない雰囲気がここにはある、と実感した嬉しい出来事でした。

 

——これから目指すこと。

これまではLGBTのことを知り、自分の周りに当事者がいる可能性に気付いてもらい、身近なこととして認知されることを目指し活動してきました。2018年の東京レインボープライド参加によって認知から浸透へ、次の段階に発展させていきたいと考えています。Alliesをもっと増やし、自発的な活動機会をもっと増やしていきたいです。そのためにも、今後は全国の各拠点にグループの支部を開設し、より働きやすい環境作りを目指します。そしてお客さまに喜ばれるより具体的なサービス提供の実現に向け、当事者のニーズとビジネスチャンスを結びつけるパイプ役として、活動の幅や可能性をもっと広げていきたいです。

 

社員ネットワーキンググループは「LGBT & Allies Rainbow」以外にも4つあります。どれも大きな熱量を持って取り組んでいます。社員たちが自主的にドライブをかけることは、D&I推進においてとても重要な役割を担っていると捉えています。

 

——他にはどういった社員ネットワーキンググループがあるのでしょうか。

Women & Allies」という女性活躍を考えるグループと、家庭と仕事の両立をテーマとした「Working Families」。そして文化や言語も役職も関係なく縦・横・斜めのつながりを持つことができる「Language and Cultural Exchange」。最後は、若手社員の活躍を支援する「Young Professionals」です。のべ2,000人の社員が自主的に参加しています。

 

——2,000人! D&I推進の施策はそれらのグループが起点となることが多いのでしょうか?

明確に分けることは難しいですが、社員の声をきっかけとする活動も、会社の方針として実施する取り組みもあります。例えば、4月の世界自閉症啓発デーと発達障がい啓発週間にあわせて、社内外で啓発イベントを行いました。また、障がい者の方の活躍推進に関する支援分野ですと、年に何回か特別支援学校のイベントなどを社員がボランティアとしてサポートしたり、社内向けに社員が自発的に障がいについての理解を促進するための講座も開いたりしています。
昨年は、そういった取り組みが評価されて東京ボランティア・市民活動センターの『企業ボランティア・アワード』を受賞することができました。女性活躍の推進に関しては「2020年までに30%の女性管理職比率を実現」と掲げて、人材育成に関する様々な施策を各部門が行っていますし、社員ネットワーキンググループでも社員自身がキャリア開発に取り組んでいます。まだまだできることがたくさんありますが、経営サイドの戦略と、現場からの意思を連携させながら動いていきたいと思っています。

 

——最後になります。これからAIGは社内外の垣根を越えて、あるキャンペーンを始めると伺いました。どういった取り組みかお聞かせいただけますでしょうか。

ありがとうございます。キャンペーン名は「DIVERSITY IS STRENGTH」といいます。違いを尊重したいという意志をもった人が、社内外を問わずひとつのチームになることを目指したキャンペーンです。まず423日にキャンペーンの立ち上がりを伝える立ち上げイベントを実施し、同時にキャンペーンのコアメッセージを伝えるためのスペシャルムービーも公開いたしました。

 

 

■スペシャルムービー

 

また今回、同じ思いを持つ人をひとつのチームにするアイテムとして、 『UNITED BLACK Tシャツ』も作りました。

 

 

一見シンプルなブラックTシャツですが、通常時は黒く、伸ばすと鮮やかなレインボーがあらわれる特殊な生地を用いています。 全ての色が混ざって生まれる最強の色、それが「UNITED BLACK」。今年の東京レインボープライドでは、たくさんの方とチームとして一緒に歩けることを楽しみにしています! これからの活動に関しては、全ての情報を集約する場所としてスペシャルサイトを立ち上げましたので、そちらもご覧いただけますと幸いです。 PROJECT-ZERO.COM

 

 

——まだまだ続いていくのですね。

はい。このキャンペーンを、大きなムーブメントにまで育てあげられるよう、多くの方とチームになり、頑張っていきたいと思っています。