私は頭から!
 私は、文章は最も刺激的で過激な表現手段であると考えています。
 だって小説を楽しんでいるとき、私たちは、文字だけを頼りに、その場面を想像したり登場人物の感情に揺さぶられたりするのです。ほとんど読者の脳内の作業です。目の前に広大な海があったり、目の前で友人が泣いていたりしているわけでもないのに、行ったことのない場所(存在しない場所かも)の会ったことのない人たち(人じゃないかも)の物語にどきどきわくわくするなんて、すごくエネルギーを使う娯楽だと思いませんか。

 そして、たとえ空想の物語とはいえ、動いてしまった読者の心は、現実です。読者の中にある、誰も考えたことのないような一面を、突きつけてくれるのです。映画も漫画ももちろん大好きですが、小説を読むときの著者と読者の共同作業が、なによりも刺激的だと思うのです。

 さて、歴史的にも現在にも、同性愛や同性愛的な描写の含まれる作品が、「禁断の」とか「禁じられた」とかいった修飾語で語られることがあります。もー、あとどれぐらい、同性愛や同性愛の描写は法律で禁止されていませんよと叫べば良いのでしょうかね。今一度、創作作品に限ってですが、本当に何が「法律で禁じられて」いるのか、ちょっとおさらいしたいと思います。

 「創作作品に限って」というのは、フィクションだと明言しているものについてです。虚構や嘘を「本当です」と言って広めたり、本人が隠したいことを他人が暴露したり、特定の個人や団体を誹謗中傷したりするのは、またちょっと違うお話なので。

 おおざっぱにまとめると、以下のような感じです。憲法で検閲は禁止されていますので、戦前の江戸川乱歩などの発禁本は、日本国憲法のもとでは解禁されています。テレビ局やラジオ局は、放送法や電波法で厳しく規制がされています。映画や出版社にはそういった法律はありませんが、自主規制で、暴力とか差別語等の扱いを制限している会社もあります。刑法で禁止されているのは、「猥褻」なものを売ったり公然に見せたりすることです。そして、「猥褻」の基準ははっきりしていません(追加で大事なのは、児童虐待。通報義務がありますので、児童虐待によって作成されたコンテンツは所持も許されません)。

 また、自治体は条例に基づき、「有害図書」を指定し、18歳未満への販売を禁止することができます。しかしこれは自治体の中だけなので、指定されていない自治体に行けば買えますし、18歳以上の方にはあまり関係ありません。

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