例えば私、10代の時から、酷い月経痛で悩んでいました。月経痛って言うか、PMDD(月経前不快気分障害)という、月経の度に自殺願望がやってくる病気です。私は2カ月に1回の頻度でしたが、そんな病気の存在、最近まで知りませんでした。月経が近づくと嘔吐したり、頭痛腰痛腹痛で歩けなくなってトイレで失神したり、ベッドの上で号泣したりしてました。就職した後も、いくつも婦人科に行っても、低容量ピルを飲んでも、運動しても良くならない。「誰にも迷惑かけないように死のう」と思って何度も辞表を書き、自分の死を知らせてほしい友人の連絡先リストを作りました。でもなぜか、月経が始まると、突然元気満々やる気満々で、あんなに思い詰めていたことも忘れて、デスクの中の辞表のことも忘れていて「なんだこれ」って思って捨てる。そんなことを20年近く繰り返していました。3年ほど前、死にたいという気持ちがいっぱいいっぱいで、職場の椅子にも座っていられず、昼間に号泣しながら会社のビルの周りを歩き回っていました。そのとき、いのちの電話に初めて連絡しました。しゃくりあげながら事情を話すと、相談員の女性が「PMDDって知ってる? 女性外来は近くにある?」と。私それまで、低容量ピルが何種類もあることすら知りませんでした。頭では、世の中にはたくさん病院があると分かっていたのですが、いざ追い詰められると、そんなこと、全然頭に浮かびませんでした。そして、新しい婦人科で、新しい低用量ピルを処方してもらったら、それはもう信じられないぐらい、精神も身体も穏やか。20年ぶりに、健康になったのです。

誰かかつての私のように思い詰めている人が居たら、なんでもいいからとにかく人と話すことをおすすめします。「助けて」という叫びが、社会との繋がりを作るのです。この社会には守ってくれる大人が居ます。それを信じてほしい。

今日紹介するのは、愛ゆえに犯罪を犯してしまった少年と、それを取り巻く大人たちとのやりとりを記した、エイダン・チェンバーズ『俺の墓で踊れ』(徳間書店)です。「ゲイ 児童文学」とかで検索すると一番上に出てくると思います。国際アンデルセン賞も受賞されている作家による名作です。

 

主人公ハルは16歳。18歳の少年バリーの墓を破壊し、逮捕された。警察にも何も語ろうとしなかったハルは、唯一の敬愛する教師にすすめられて、手記を書き始める。ソーシャルワーカーをはじめ、大人たちの支援を受けながら、ハルとバリーの間で何があったのか、次第に明らかになってゆく。

すっかり大人になってしまった今読むと、少年たちの若さにヤラれてしまって、もうほんとカロリー高い文章ばかりで鼻血出そう。この疾走感、今の感覚を最優先にして生きている血の通った肉体が、とにかく美しい。まあ多少、体に毒かもしれませんね。肉を食べ過ぎたときとか、ジムでいつもよりきついトレーニングした後とか、鍼治療した後とかの感覚に似ている。この良質なヤングアダルト読了後の心地よい疲労を、是非みなさんに味わってほしいです。

エイダン・チェンバースはまだ未邦訳の作品もたくさんあるので、ぜひそちらも応援してほしい!

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