そして、自分と友達になれるようなこうゆう主人公を探してる! あるいは、こうゆう若い血をたくさん飲みたい! という方には、ヴォルフガング・ヘルンドルフ『14歳、ぼくらの疾走:マイクとチック』(小峰書店)も大変おすすめです。

 

主人公のマイクは、学校に友達が居ない。母親はアル中でしょっちゅう療養施設に入っていて不在だし、父親はその間に不倫している。退屈な毎日だったが、彼のクラスに転校生のチックがやってきた。中華系ロシア人の不良。2人はクラスの人気者の女子の誕生日パーティーに呼ばれなかったことをきっかけに、盗んだ車で「ワラキア(存在しない場所)」を目指して走り出す。

もちろん2人の少年と途中で合流する少女の、全力で生きる姿も素敵ですが、やはり注目は、彼らが道中に出会う大人たちの多様さです。ダメな大人も居る、正しくて厳しい大人も居る、意味わかんないルールに縛られてる大人も居る、なぜか会ったこともないのに無謀な旅を応援してくれる大人も居るんです。自分は、自分の限界まで試したい少年少女たちにとって、どんな大人だろうか。もしもマイクとチックに、今出会ったら、どんなことをしてやろうか。そんなことを妄想するのも楽しいです。

ちなみにこの作品、『50年後のボクたちは』というタイトルで映画化されています。こちらも、10代の価値観と、美しいドイツの田舎の風景のマリアージュが最高です。そして、日本で舞台化もされており、2019年7月13日(土)~28日(日)東京・シアタートラムで再演します! 疾走感満点で、ほんと超おすすめです。

■ティーヌ
レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、ノンセクシャル、アセクシャル など、セクシャル・マイノリティと呼ばれる人々が登場する小説を応援する会、読書サロンを主宰。月に1回、都内で読書会を開催。
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